甲状腺機能低下症や橋本病は、甲状腺が十分なホルモンを生成できず、甲状腺機能亢進症やバセドウ病は甲状腺ホルモンを過剰に生成してしまいます。これらの疾患は、全身に様々な影響を及ぼし、自律神経や代謝に影響を与えます。そのために、甲状腺機能の低下や亢進の状態では悪天候や気候の変動時に不調を感じることがあります。甲状腺ホルモンの変化と気象病の関係や対策について見てみましょう。
気象病(天気病)や天気痛とは?
始めに気象病について簡単に確認しておきましょう。
気象病とは、天候や気候の変化により不調が起こる状態を指します。気圧や気温、湿度の変化に対し、自律神経が調整を行おうとしますが、体が変化に対して柔軟に適応できないと、さまざまな不調を感じるようになります。天気病や天気痛と呼ばれることもあります。
ストレスや睡眠不足、過労などが自律神経のバランスを崩している場合、気象条件の変化が更にそのバランスをさらに乱し、不調が顕著になることがあります。
甲状腺ホルモンと自律神経、気象病の関係は?
甲状腺ホルモンは、自律神経のうちの交感神経の活動を高める効果があります。
甲状腺ホルモンの増加は心拍数を上昇させ、代謝率を高めるため、甲状腺ホルモン量が増えると、交感神経が活性化されやすくなります。
甲状腺機能亢進症やバセドウ病では交感神経の働きが優位になり、甲状腺機能低下症や橋本病では反対に副交感神経の働きが優位になりやすくなります。
自律神経系は、体温、心拍、血圧、消化などの無意識の体の機能を調節する役割を担っています。甲状腺機能の亢進や低下によって、気候変動に自律神経が柔軟に適応できないと、気圧や気温、湿度の変化に対して不調を感じるようになってしまいます。
甲状腺機能低下症や橋本病と気象病
甲状腺機能低下症や橋本病では代謝が低下しやすいため、気温の変化に対して体温調節が難しくなることがあります。寒冷に対する耐性が低下し、寒い天候が体調に影響を与えることがあります。また、悪天候によるむくみや倦怠感、気分の落ち込み等も感じやすいでしょう。その他にも次のような不調が起こりやすくなります。
- 疲労感・倦怠感
- 頭痛(ずきずきとする片頭痛)
- めまいや立ち眩み
- 低血圧
- 冷え
- 過剰な眠気
- 消化不良(腹痛や下痢)
- 腹部膨満感
甲状腺機能亢進症やバセドウ病と気象病
甲状腺機能亢進症やバセドウ病では代謝が亢進しやすいため、耐暑性が低下し、夏の暑さによって不調を感じることが多くなります。異常な発汗やイライラ、疲労等を感じやすいでしょう。血管の収縮、筋肉の緊張によって頭痛や肩こりも起こりやすくなります。
- 頭痛(圧迫感、締め付けられるような片頭痛)
- 血圧の上昇
- 不安感・緊張感
- 動悸・心拍数の増加
- 発汗
- 胃痛・消化不良
- 筋肉痛、肩凝り、腰痛
- 不眠:
気象病を改善する食生活
食生活も自律神経の調整作用に大きな影響を与えます。
規則正しい食事時間や、栄養バランスの良い食事は自律神経を整え、気象病を緩和するために重要な役割を果たします。
食べ過ぎや、その反対に極端な食事量の不足も自律神経の働きに悪影響を与えます。調子の悪い時は食事量を見直しましょう。
甘いものやカフェインをとると頭痛が和らぐ方もいらっしゃいますが、頼り過ぎれば自律神経に過度な刺激を与えてしまうことになります。頼り過ぎないようにしましょう。
気象病とマッサージ
気象病にはマッサージも有効だと考えられています。気象病は内耳にある三半規管が関係していると言われています。耳を優しくマッサージしましょう。
また、血流の低下は気象病による肩こりを悪化させます。ストレッチをして体をほぐしましょう。
気象病の対策まとめ
気象病は急な気圧や温度変化等で起こりやすくなります。特に、季節の変わり目は身体が気候の変化に適応できていないために、不調が出やすくなります。
甲状腺機能低下や亢進の状態の方は、甲状腺疾患の治療を受け、甲状腺ホルモンを安定させることがもっとも重要です。
その上で、急な気温の変化のある日は、体温調整がしやすい服装を心がけ、リラックスをして、栄養バランスの良い食生活を心がけましょう。
自律神経失調症による不調は、他の疾患が影響していることもあります。改善されない不調がある場合は、自己判断せずに医師にご相談ください。