橋本病やバセドウ病と甲状腺


甲状腺とは、甲状腺ホルモンを作り全身に送りだす臓器です。昆虫のチョウチョウのような形をしています。喉ぼとけの下にあり、女性は首の中央から下部分、男性はもう少し下方にあり、首の付け根付近に位置します。甲状腺の裏側には副甲状腺という小さな臓器も4つついています。

 

甲状腺ホルモン合成量が不足又は過剰な状態が続くと、甲状腺疾患(甲状腺の病気)になってしまいます。甲状腺疾患にはさまざまな種類がありますが、その代表的なものが橋本病とバセドウ病です。

 

橋本病では甲状腺で作られる甲状腺ホルモンが不足し、バセドウ病では甲状腺ホルモンが増えすぎてしまいます。甲状腺が腫れていると橋本病やバセドウ病の疑いがあります。

甲状腺は首の付け根付近にある蝶々のような形状の臓器。腫れていると橋本病やバセドウ病の疑い。甲状腺裏に副甲状腺という別の臓器がある。
甲状腺は首の付け根付近にある蝶々のような形状の臓器。腫れていると橋本病やバセドウ病の疑い。甲状腺裏に副甲状腺という別の臓器がある。

橋本病の症状とバセドウ病の症状、検査


橋本病やバセドウ病は甲状腺を傷つける自己抗体が関係する自己免疫疾患です。男性よりも女性に多く見られます。橋本病やバセドウ病の症状は、いつもの不調の延長線上にあります。そのために多くの方が病気の症状だと気づかずに過ごしています。

 

イライラ、息切れ、疲れやすい、眠れない、あるいは、やる気が出ない、冷え性、食欲がないといった不調を抱えていませんか?これは歳のせい?更年期症状?自身の性格の問題?と考えて、不調をがまんしていませんか?これらは甲状腺の病気である橋本病やバセドウ病の主な症状です。 

バセドウ病の症状・橋本病の症状
バセドウ病の症状・橋本病の症状

ピンク色はバセドウ病の主な症状、水色は橋本病の主な症状です。白色はバセドウ病と橋本病に共通して見られる症状です。あてはまる症状が多い程、バセドウ病や橋本病の疑いが強まります。

 

 

橋本病により甲状腺機能が低下した場合、寒がり、太りやすい、気分が落ち込む、といった症状が現れやすくなります。

 

バセドウ病の場合は暑がり、体重が減る、イライラする、といった症状が現れやすくなります。

 

むくみや疲労、脱毛、甲状腺の腫れ等の症状は橋本病とバセドウ病のどちらでも現れることがあります。

甲状腺ホルモンの働きと甲状腺の病気


甲状腺ホルモンは代謝を調整するホルモンです。そのために、橋本病では甲状腺ホルモンが不足するために太りやすく、バセドウ病では甲状腺ホルモンが増えすぎるために、やせてしまいます。

 

甲状腺ホルモン値が正常より低い状態が続くことを「甲状腺機能低下症」、高い状態が続くことを「甲状腺機能亢進症/甲状腺中毒症」といいます。

 

甲状腺機能低下症の代表的な病気が「橋本病」、甲状腺機能亢進症の代表的な病気が「バセドウ病」です。

 

治療は不要であるものの、甲状腺ホルモンを作りにくくなっている状態を「潜在性甲状腺機能低下症」、甲状腺ホルモンが増えやすくなっている状態を「潜在性甲状腺機能亢進症」と言います。

 

橋本病やバセドウ病は病気の原因に自己抗体が関与する「自己免疫性甲状腺疾患」です。

甲状腺の検査項目と橋本病やバセドウ病の診断


橋本病やバセドウ病などの甲状腺の病気が疑われるとき、はじめにTSH(甲状腺刺激ホルモン)やFT3,FT4(甲状腺ホルモン)、自己抗体などを血液検査で調べます。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)


TSH(甲状腺刺激ホルモン)は甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを作るように指令を出します。脳の下垂体から分泌(ぶんぴ)されます。甲状腺ホルモンが減ればTSHを増やして指令を多く出し、甲状腺ホルモンが増えれば指令不要となってTSHは減ります。

 

橋本病ではTSHが指令を多く出しても甲状腺ホルモン量が減ってしまいます。

 

バセドウ病ではTSHの指令を減らしても、甲状腺ホルモン量が多くなってしまいます。 

FT4とFT3


甲状腺ホルモンにはT4とT3があります。その中で、実際に全身に作用しているものはFT4(フリーT4)やFT3(フリーT3)という遊離(フリー)状態になったものです。甲状腺の病気を調べる際も、FT4(フリーT4)やFT3(フリーT3)を検査します。 

 

橋本病ではFT3やFT4が減ります。

 

バセドウ病ではこれらが増えます。 

橋本病やバセドウ病と自己抗体


橋本病やバセドウ病では甲状腺や甲状腺ホルモンに影響を与える自己抗体の値が高くなります。

 

橋本病に関係する自己抗体:  

  • TgAb(抗サイログロブリン抗体)
  • TPOAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体) 

バセドウ病に関係する自己抗体:  

  • TRAb(抗TSH受容体抗体)
  • TSAb(TSH刺激性レセプター抗体)

潜在性甲状腺機能低下症と潜在性甲状腺機能亢進症


潜在性甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモン(FT3やFT4)は基準値内であるものの、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高い状態です。

 

潜在性甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンは基準値内であるものの、TSHが低い状態です。

 

どちらも自覚症状は乏しく健康診断などで偶然発見されることが多いですが、なかには不調を感じる方もいます。また、潜在性甲状腺機能低下症ではコレステロール値に異常が出ることがあるとの報告があります。

その他の甲状腺の病気


橋本病やバセドウ病の他にも甲状腺の病気があります。以下は代表例です。 

  • 無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)
  • 亜急性甲状腺炎
  • プランマー病
  • 中枢性甲状腺機能低下症
  • 甲状腺腫瘍

無痛甲状腺炎は橋本病やバセドウ病の経過観察中や寛解後(治療が終了した後)などに起こることがあります。 

橋本病・バセドウ病の検査を受ける


甲状腺の病院をお探しの方へ。甲状腺の検査や診断は、甲状腺専門病院・クリニックや甲状腺の治療を行う診療科のある病院でうけることができます。 

 

日本甲状腺学会のホームページから甲状腺の専門病院を検索することができます。

➡日本甲状腺学会ホームページ「認定専門医施設名簿」

 

日本内分泌学会のホームページからは甲状腺疾患治療を行う病院を検索することができます。 

➡日本内分泌学会「専門医」を調べる

 

これ以外にも甲状腺疾患の検査や専門的な治療が受けられる病院があります。下記のキーワードを目安に、ご自宅や職場から通院しやすい病院のホームページを確認してみましょう。

✔ 大学病院

✔ 総合病院

✔ 甲状腺・内分泌・代謝科のある病院

不調を感じて病院にかかっても、橋本病やバセドウ病は見逃されることがあります。橋本病やバセドウ病の治療が受けられる病院にかかることが確実な診断につながります。 

甲状腺の病院にかかる前に


橋本病やバセドウ病などの甲状腺の病気は症状が多岐に渡るため、病院にかかる際に、あらかじめ、ご自身が感じる不調について整理をしておくと安心です。 次のページでは初診時の問診やアンケートで質問されやすい項目についてまとめています。ご参考になさって下さい。