ゴイトロゲンである豆乳や豆腐などの大豆製品や大豆イソフラボン、ソイプロテインの、橋本病・甲状腺機能低下症への影響や、これらが甲状腺に良い食べ物なのか、それとも食べてはいけない食品なのかについてまとめています。
橋本病と豆乳や大豆イソフラボン摂取について
橋本病・甲状腺機能低下症の方は月経不順(生理不順)や、PMSやPMDD等の月経困難症を伴うことがあります。
そのために、月経を整える対策、症状の緩和策として、豆乳や大豆イソフラボンのサプリメントを飲んでいるという方も多いのではないでしょうか?
「コレステロール値を下げたい」、「何となく体に良さそう」「体質改善したい」「減量のためにダイエットしたい」等の理由で豆乳や豆腐、おからなどの大豆製品、おから、ソイプロテインを意識的に食べている方もいらっしゃるようです。
はたして、これらは橋本病・甲状腺機能低下症と相性は良いのでしょうか?
大豆はゴイトロゲン
大豆はゴイトロゲンです。
ゴイトロゲンとは甲状腺ホルモンの合成を邪魔する物質や物質が含まれる食品のことをいいます。
ゴイトロゲンをたくさん食べると、甲状腺ホルモンの合成が上手くいかず、甲状腺腫大(甲状腺がはれること)がおこり、甲状腺機能低下症になってしまう恐れがあるのです。
これはヨーロッパで、豆乳で育てられた乳児に甲状腺腫(甲状腺のはれ)が見られ、その後に牛乳ベースのミルクに置き換えたところ、甲状腺腫が改善されたという多くの報告から明らかになりました。
甲状腺ホルモンに影響?豆乳や豆腐などの大豆製品や大豆イソフラボンサプリは控えた方が良い?
豆乳や豆腐などの大豆製品やソイプロテイン、大豆イソフラボンサプリメントなどを日常的に摂取していると、甲状腺ホルモンのうち、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が少し上昇することがわかっています。
橋本病・甲状腺機能低下症と大豆の悪影響
TSH(甲状腺刺激ホルモン)の上昇は軽度であるため、甲状腺に大きな悪影響はないのではないかという意見も見られますが、実際には注意が必要です。
甲状腺に問題のない方にとっては悪影響がないかもしれませんが、橋本病・甲状腺機能低下症の方にとっては、軽度の上昇の悪影響がだんだんと大きくなる恐れがあります。
治療が不要な経過観察中の橋本病の方が、大豆製品を継続的に摂取することで、治療が必要な橋本病に進行する例が増えるとの報告も見られます。
TSHと妊活や不妊治療や妊娠中の方
妊娠を希望される方や妊娠中は甲状腺ホルモン値の厳密な管理が必要になってきます。妊活中や不妊治療中の方は、TSHの値を2.5μIU/mL以下に調整するようにすすめられます。
しかし、大豆製品はTSHを軽度に上昇させてしまうため、食べ過ぎれば、TSHの調整に影響が出る恐れがあります。
甲状腺ホルモン薬と大豆製品
大豆製品の摂取は甲状腺ホルモン薬の吸収を妨げることも分かっています。
大豆製品を食べる際は、甲状腺ホルモン薬の内服との間に十分な時間を空けるようにしましょう。
まとめ
✅大豆製品はTSHの値を少し上昇させます。バセドウ病や橋本病・甲状腺機能低下症の方にとっては大きな影響となる恐れがあります
✅橋本病の方で妊娠を希望される方は大豆製品のとりすぎに特に注意が必要です
✅大豆製品を食べる際はチラージンS服用と十分な時間間隔をあけましょう
ヨウ素と豆乳などの大豆製品の関係
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料として食事からの摂取が必要不可欠です。ヨウ素の過剰摂取も不足も甲状腺に悪影響を与えます。ゴイトロゲンの多い食品を摂取し、ヨウ素摂取量が不足していると、甲状腺疾患に悪影響を与えてしまいます。摂取量を見直しましょう。
参考文献
Jemiliat Otun et al. Systematic Review and Meta-analysis on the Effect of Soy on Thyroid Function. Scientific Reports | (2019) 9:3964 |https://www.nature.com/articles/s41598-019-40647-x
, Effects of soy protein and soybean isoflavones on thyroid function in healthy adults and hypothyroid patients: a review of the relevant literature. Thyroid . 2006
Mar;16(3):249-58. https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/thy.2006.16.249
(いずれも2020年11月24日参照)