ここでは、橋本病・甲状腺機能低下症の方で、漢方薬やハーブティーを摂取している、あるいは検討している方に向け、漢方薬やハーブティー等の禁忌情報についてお伝えします。
橋本病・甲状腺機能低下症の症状により、疲労や日中の眠気、怠さ、むくみ、冷え、気分の落ち込み、肌の乾燥等に悩むことがあります。
甲状腺ホルモン薬(チラージンS)錠の内服療法と併行し、食事療法や漢方薬の服用、マッサージやヨガ、運動等に取り組まれる方もいらっしゃるでしょう。
今日のテーマは漢方やハーブティーです。これらに含まれる成分は、甲状腺機能低下症の症状を悪化させたり、合併症を引き起こしてしまうこともあるために、注意が必要です。
橋本病・甲状腺機能低下症と漢方やハーブティー
漢方薬やハーブティー等には、橋本病の辛い症状を緩和させるとして、おすすめのものもありますが、なかには悪影響を与えてしまう場合があります。
その1つとして「リコリス」という植物があります。リコリスは日本名では「甘草」と言います。
名前の通り甘味のある植物ですので、風味付けとして、特定の効能のために利用される以外にも、多くの漢方薬やハーブティーに取り入れられています。
漢方やハーブティーではありませんが、天然の成分ですので、ヨーロッパではお菓子のグミの風味付けにも使われています(今日のリコリス入りのグミのリコリス含有量はごく少量になっているようです)。
実は、このリコリス(甘草)は甲状腺機能低下症の方にとって注意が必要なのです。
甘草と偽アルドステロン症
橋本病・甲状腺機能低下症の方がリコリス(甘草)に含まれる「グリチルリチン」という成分を甲状腺ホルモン薬と併せて摂取し続けると、体内のミネラルバランスに異常が起こり、「偽アルドステロン症」を引きおこす恐れがあるため、厚生労働省が注意を呼びかけています(1)。
偽アルドステロン症を発症すると、血液中のカリウム量が減り、次の様な症状を引き起こします。
- 倦怠感
- 手足のしびれ
- 頭痛
- 高血圧
など
これらの症状を放置すれば重症化する恐れもあります。
橋本病・甲状腺機能低下症と偽アルドステロン症のリスク
リコリス(甘草)の摂取量と偽アルドステロン症の発症には個人差があり、どのくらいの摂取なら問題がないかはわかっていません。また、摂取後すぐに症状が出る方もいれば、数年たって出る方もいるようです。
リコリスは漢方薬やハーブティー以外にも一部の「利尿薬」や「風邪薬」「胃薬」等にも含まれていることがあります。
橋本病・甲状腺機能低下症の治療と並行して漢方薬や市販薬を内服する際は、あらかじめ主治医に相談すると安心です。また、漢方薬や市販薬を購入する際は、購入先で甲状腺ホルモン薬を内服していることを伝え、リコリス(甘草)についても確認しましょう。ハーブティー等を楽しむ際も原材料表示を確認すると良いでしょう。
偽アルドステロン症の症状が疑われ、リコリスの入ったものを摂取している場合、すぐに摂取を中断し、主治医に相談しましょう。
橋本病と偽アルドステロン症のまとめ
橋本病・甲状腺機能低下症の治療と併行して行う代替療法は、心身の不調を整え、治療そのものにも良い影響を与えてくれる可能性があります。正しい情報を得て、安全なものを取り入れていきましょう。また、副作用や体調の変化に注意し、不調が現れた場合は、ご自身で判断せず、ただちに医師に確認しましょう。