グルテンフリーダイエットとは?
橋本病の方はグルテンフリーダイエットを実践されていたり、関心のある方も多いのではないでしょうか?
グルテンフリーダイエットとは、もともとセリアック病という自己免疫疾患の方のための食事療法です。
セリアック病の方はグルテンを摂取することで体内に自己抗体ができ、小腸をキズつけてしまうために、グルテンを含む食品を除去した食生活を送る必要があります。
ところで、なぜグルテンフリーダイエットが橋本病の方の関心を寄せているのでしょうか?
橋本病とセリアック病
ヨーロッパでは橋本病の方にもグルテンフリーダイエットを推奨するケースが増えています。
この理由は、セリアック病の方の中に、橋本病(経過観察の潜在性・不顕性の方も含む)を併発している方が多くいることが分かってきたためです。
あくまで仮説の段階ではありますが、このようなケースにおいては、グルテンが橋本病の自己抗体を増やす引き金の1つになっているのではないかと考えられています。
セリアック病は発症するまでに長い年月を要します。そのために、橋本病の方にグルテンフリーダイエットを実践することで、橋本病の症状の緩和とセリアック病の予防の双方の効果が期待されているのです。
しかし、セリアック病=橋本病ではないために、すべての橋本病の方がグルテンフリーダイエットによって、橋本病の症状が緩和されるわけではありません。
橋本病のグルテンフリーダイエット効果
ヨーロッパにおける橋本病の方を対象としたグルテンフリーダイエットにおいても、効果があったという報告と、効果が見られなかったという報告に二分しています。
また、効果があったという報告の詳細を見てみると、橋本病の方の中でも「抗組織トランスグルタミナーゼ抗体が陽性の方」とあります。
つまり、橋本病の方の中でも、潜在的にセリアック病のリスクが高いことが確認された方を限定としています。
このようなケースにおいては、グルテンフリーダイエットによって橋本病の抗体数の減少が見られ、将来的なセリアック病発症のリスクも低減させることができると考えられます。
橋本病の抗体のみを保持する方に対しても、グルテンフリーダイエットの効果が期待されていますが、今のところ効果があるという報告は見あたりません。
橋本病の方へのグルテンフリーダイエットの有効性については、調査はまだ始まったばかりです。今後の報告を見守る必要があります。
グルテンフリーは意味がない?
橋本病の方はグルテンフリーダイエットをしても意味がないのでしょうか?
現況においては、橋本病を単独で発症されている方がグルテンフリーダイエットを実践することで何らかの効果があるかは分かっていません。
ただ、グルテンフリーダイエットはリスクのあるダイエット法ではありません。気になる方は試しに実践してみてみると良いでしょう。
これによって、橋本病の抗体数が減れば、グルテンフリーダイエットの効果があったということが分かります。
また、橋本病の方は消化吸収力の低下が見られるため、これまでにグルテンを多く摂取していた方が、グルテンフリーダイエットを実践することで、胃腸の負担を減らすことができる可能性があります。直接的な効果ではないものの、これもまた食事療法として意味のあることです。
グルテンフリーは太りやすい!
繰り返しになりますが、グルテンフリーダイエットは特別なリスクを伴うようなダイエット法ではありませんので、基本的にどなたでも実践することができます。
ただ、イタリアの調査チームよるグルテンフリーダイエットに関する大規模調査報告によると、グルテンフリーダイエットによって、肥満や脂質異常症のリスクが高まるケースが増えているとのことです。
このために、グルテンフリーダイエットを実践する際は、グルテンフリーの食品を選ぶだけでなく、食生活全体の栄養バランスを再度見直す必要があります。
参考文献
Robert Krysiak et al. The Effect of Gluten-Free Diet on Thyroid Autoimmunity in Drug-Naïve Women with Hashimoto’s Thyroiditis: A Pilot Study. Exp Clin Endocrinol Diabetes 2019; 127(07): 417-422. DOI: 10.1055/a-0653-7108
Valentina Melini et al. Gluten-Free Diet: Gaps and Needs for a Healthier Diet. Nutrients . 2019 Jan 15;11(1):170. doi: 10.3390/nu11010170.
(2020年11月6日参照)