バセドウ病や橋本病・甲状腺機能低下と内分泌性ミオパチー
甲状腺ホルモンは基礎代謝を調整するホルモンであるため、バセドウ病や橋本病・甲状腺機能低下症の方は、基礎代謝調整の中心となる筋肉に影響を与え、筋力の低下や筋肉痛をはじめとする、筋肉の不調を起こすことがあります。
この主な原因は内分泌性のミオパチーと呼ばれるものです。
バセドウ病と筋肉痛
バセドウ病の方は甲状腺機能亢進によって太ももや腰回り、背筋等の近位筋の筋力低下が進みます。
この際、筋力の低下が大きい方は、姿勢を保つことが困難になる、歩行速度が遅くなる、ペットボトルの蓋が開けられなくなる、易疲労感等の自覚症状を伴うことがあります。甲状腺中毒性ミオパチーと言います。
なかには食後や運動をした翌日に手足が動かなくなったり、強い脱力感を感じる周期性四肢麻痺を起こすことがあります。この際、筋肉におけるナトリウムとカリウムのバランスの大きな変化が起こっており、危険ですので、速やかに医師に症状を申し出ましょう。
周期性四肢麻痺のような大きな症状のない限り、バセドウ病による筋力の低下は、甲状腺疾患の一般的な血液検査からは見つからないこともあります。そのために、まずは症状を自覚することが重要になります。
通常は、バセドウ病の治療によって自然に筋力が回復していきますが、他の疾患との鑑別が必要な場合もあるため、自覚症状のある方は、まずは主治医に症状を伝えるようにしましょう。
バセドウ病と筋肉痛について食事で気を付けべきこと
日常の食生活においては、エネルギー切れによる易疲労感をできるだけ防ぎながら十分なエネルギーを補うために、1食あたりの食事量を減らし、複数回にわけて食べることをお勧めします。
タンパク質が不足しやすいため、肉や魚、乳製品、卵等の良質なタンパク質を過不足なく食べるようにしましょう。
また、カリウムも一時的に不足しやすくなるため、野菜をたっぷり食べましょう。
橋本病と筋肉痛
橋本病・甲状腺機能低下症の方は甲状腺機能低下により、筋力の低下が起こります。この際の主な症状は全身のむくみや、筋肉の強い痛みや硬直、親指の力が入りにくくなる(手根管症候群)などです。
バセドウ病の方でも服薬治療によって甲状腺機能が一時的に低下することがあるため、橋本病の方と同様の症状が現れる可能性があります。
橋本病・甲状腺機能低下症による筋力低下の場合は、血液検査によって見つかることもあります。筋肉痛の症状がある時は、医師に伝えましょう。
橋本病と筋肉痛について食事で気を付けべきこと
日常の食生活においては、基礎代謝の低下によるエネルギー過剰を考慮しながらも、栄養不足に注意が必要です。
そのために、できるだけ甘いものを控え、バランスのよい食事を心がけましょう。
また、カリウムが不足しやすくなるため、野菜をたっぷり食べましょう。
カリウムは過剰摂取によっても筋肉や心臓に大きな負担をかけ、食欲不振等を招いてしまいますので、サプリメントからではなく、食事から摂取しましょう。
甲状腺疾患と筋力トレーニングや食事療法について
バセドウ病、橋本病・甲状腺機能低下症のいずれの筋力低下や筋肉痛において、回復のために重要なことは、甲状腺疾患の治療によって、甲状腺ホルモン値を適切に保つことです。その上で、少しずつ筋力を強化する運動に移行していきましょう。
バセドウ病や橋本病・甲状腺機能低下症の方の多くは、筋力の低下と同時に筋肉の器質的な変化が起こっています。
そのために、筋力をつけたいからといって、筋力トレーニングをはじめとする無酸素運動を急に始めると、筋肉には非常に大きな負担がかかってしまいます。
甲状腺疾患発症後の体質の変化によっては、筋肉の回復には時間を要します。急な激しい運動負荷は、筋肉や全身の大きな負担になってしまいます。
筋力の低下が大きい方が運動を開始する際は、まずは食事療法によって、栄養をバランス良く補給しながら、ウォーキングのような有酸素運動から始め、少しずつ体を慣らしていきましょう。
いきなり強い運動をするのではなく、食事療法と有酸素運動の組み合わせから始め、焦らずに徐々に体を運動に慣らしていくことがポイントです。