バセドウ病の発症や再発にはストレスが影響していることがあります。本当なのでしょうか。なぜ影響するのでしょうか。調査結果や甲状腺とストレスの関係ついて、わかりやすくお伝えします。
バセドウ病とストレスの関係に関する調査報告
バセドウ病とストレスの関係について調べた研究報告は少ないものの、これらの因果関係に関する研究論文がいくつか見られます。
報告によれば、バセドウ病の抗甲状腺薬による治療中に症状が悪化したケースや、治療終了後に再発したケースにおいて、症状があらわれる1年以内に、少なくとも1回はストレスの多いできごとを経験しているとのことです。
また、ストレス経験の回数が多いほど、再発回数が多いという結果も報告もあります。
バセドウ病と年齢やストレスの関係
バセドウ病発症時の年齢が低いほどストレスと再発の関係が深いようです。発症年齢が51歳以上の場合は、ストレスと再発の関係は少ないようです。
ストレスが甲状腺やバセドウ病に与える影響のメカニズム
ストレスはどのように甲状腺に影響を与えるのでしょうか。メカニズムを見てみましょう。ストレスの影響は甲状腺ホルモンの合成や分泌を促すメカニズムの2カ所に影響を与えます。
1つめのメカニズム:
- ストレスは脳の視床下部から放出される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を増やします。
- TRHは下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を増加させます。
- TSHは甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの分泌を促します。
2つめのメカニズム:
ストレスは交感神経を介して甲状腺を直接刺激し、甲状腺ホルモンの分泌を促します。
本来ならば甲状腺ホルモンの分泌量が増えると、それが脳に伝わり、甲状腺ホルモンの合成や分泌量は減ります。すると、交感神経の活発な働きも納まります。
強いストレスを受けたり、小さくても慢性的なストレスの影響が続くと、甲状腺ホルモンは交感神経の活発な働きを維持し、甲状腺機能が亢進する恐れがあります。
ストレスは免疫機能を変化させる恐れがあり、免疫機能の異常が組み合わさると、バセドウ病の発症や悪化、再発につながる恐れがあります。
バセドウ病と性別やストレスの関係
女性のバセドウ病は精神的なストレスの影響が大きく、男性ではバセドウ病とストレスの因果関係が認められないとされています。
ただし、バセドウ病すべての方がストレスと症状に因果関係があるわけではないという指摘もあります。女性のバセドウ病の原因に必ずしも精神的なストレスが影響しているわけではありません。
まとめ
ストレスは甲状腺ホルモンや免疫機能に影響を与えるため、女性のバセドウ病の発症や再発リスクを高める恐れがあります。具体的な因果関係については、さらに詳しい研究が必要です。
バセドウ病への直接的な影響の有無を問わず、できるだけこまめにストレスを解消しましょう。
参考文献
Hong H, Lee J. Thyroid-Stimulating Hormone as a Biomarker for Stress After Thyroid Surgery: A Prospective Cohort Study. Med Sci Monit. 2022 Nov 10;28:e937957. doi: 10.12659/MSM.937957.
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