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甲状腺とセレンの関係②:セレンが豊富な食品

セレンは甲状腺の健康に不可欠な微量ミネラルです。甲状腺ホルモンの生成と代謝に関与し、抗酸化作用を持つ酵素をサポートしています。セレン不足は甲状腺機能低下や、橋本病をはじめとする慢性甲状腺炎のリスクを高める可能性があります。適切なセレン摂取は、甲状腺の正常な機能維持に役立ちます。セレンが豊富な食品や摂取時の注意事項についてご紹介します。

セレンが豊富な食品

甲状腺ホルモンの生成や代謝に必要不可欠なセレンは、どのような食品に含まれるのでしょうか?セレンが豊富な食品を確認してみましょう。

ブラジルナッツ

ブラジルナッツはセレン含有量が非常に高い食品です。112個で必要なセレン量を十分に摂取できます。

魚介類

マグロ、サーモン、イワシ、エビなどの魚介類はセレンが豊富です。

肉類

牛肉、鶏肉などの肉類にもセレンが含まれています。レバーは特にセレン含有量が高いです。

特に、卵黄部分にはセレンが多く含まれています。

穀類

特に玄米や全粒粉などの全粒穀類にはセレンが豊富に含まれています。主食に全粒穀類を選ぶことで、セレンを手軽に摂取することができます。

セレン不足になりやすい食生活

一般的には、栄養バランスの良い食生活を送っていればセレンが不足することはありません。しかし、いくつかの要因によってセレン不足が起こる可能性もあります。どのような場合に不足してしまうのでしょうか。

土壌のセレン含有量が少ない

 

土壌のセレン含有量が少ない地域では、そこで栽培される作物のセレン含有量も低くなります。そのため、その地域の食材を主に摂取しているとセレン不足になる可能性があります。中国東北部やチベットは土壌中のセレンが極端に少なく、この地域に暮らす人々はセレン欠乏症が起こりやすいことが知られています。また、欧米をはじめ、内陸部で暮らす人々はセレンの摂取量が少ないことがあります。

 

食生活の偏り

 

特定の食品に偏った食生活を送っている場合、セレンが不足することがあります。特に、動物性食品や魚介類を摂取しない場合、セレン摂取量が不足する可能性があります。

 

吸収障害や必要量の増加

 

消化器疾患や腸の吸収障害など、特定の健康状態がある場合、セレンの吸収が妨げられることがあります。また、感染症などによってセレンの必要量が増え、不足しやすくなることがあります。

セレン摂取のポイント

セレンを食事から適切にとるためのポイントについて確認しておきましょう。

セレンは不足だけでなく過剰にも注意が必要

セレンは必要量を適切に摂取することが重要ですが、実は過剰摂取にも注意が必要です。日本人の食事摂取基準2020年版によると、セレンの摂取目安量は、3049歳の男性で30マイクログラム、成人女性で25マイクログラムです。セレンには毒性もあり、過剰に摂取すると中毒症状が発生する可能性があります。症状には、脱毛、爪の変色、胃腸障害、神経系の障害などが含まれます。サプリメントやブラジルナッツ摂取によるセレン過剰症が報告されています。

セレン過剰摂取と甲状腺機能低下症

セレンの過剰摂取により、甲状腺ホルモンの生成と分解のバランスが乱れ、甲状腺に炎症を引き起こし、甲状腺機能を低下させる可能性があります。

多様な食品をバランス良く

セレンが豊富な食品(全粒穀類、魚介類、肉類、卵など)をバランスよく摂取することで、自然な形でセレンを補うことができます。特に、海のない内陸部の国で生活をしている方は、セレン含有量の高い食品を意識的に摂取することが重要です。

セレンサプリメントを摂取する場合

基本的にサプリメントは不要ですが、必要に応じてセレンサプリメントを使用することも考慮されます。その場合、過剰摂取を避けるために医師や管理栄養士の指導を受けることが推奨されます。

まとめ

栄養バランスの良い食生活を送ることで、セレン不足を防ぐことができますが、地域の土壌や個々の健康状態によっては不足する可能性もあります。また、セレンは不足だけでなく、過剰摂取によっても、甲状腺にダメージを与える恐れがあります。多様な食品をバランスよく摂取し、必要に応じて医師や管理栄養士に相談することで、セレンの適切な摂取を確保し、健康を維持することができます。

参考文献