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甲状腺とセレンの関係

セレンは甲状腺の健康に不可欠な微量ミネラルです。セレン不足は甲状腺機能低下や、橋本病をはじめとする慢性甲状腺炎のリスクを高める可能性があります。セレンが豊富な食品や注意事項についてご紹介します。

甲状腺とセレンの関係

甲状腺は首の付け根にあり、体の代謝を調節する甲状腺ホルモンを生成する小さな臓器です。甲状腺ホルモンは、エネルギーの生成、成長、発達に関与しています。セレンは、甲状腺ホルモンの生成と変換に関与する2種類の酵素の活性化に必要不可欠な微量ミネラルです。

セレン不足と甲状腺疾患

セレン不足は、甲状腺疾患のリスクを高める可能性があります。例えば、セレンが不足すると、甲状腺が適切に機能せず、橋本病をはじめとする慢性甲状腺炎などの疾患を引き起こすことがあります。

 

橋本病に限らず、全ての方が食生活においてセレンが不足しないように注意する必要があります。

セレンが豊富に含まれる食品

  • ブラジルナッツ
  • 魚介類
  • 肉類
  • 全粒小麦

特にブラジルナッツにはセレンが非常に多く含まれています。

セレンの摂取推奨量と耐容上限量

日本人の食事摂取基準2020年版によると、セレンの摂取推奨量は、3049歳の男性で30㎍(マイクログラム)、成人女性で25μg。耐容上限量は男性で450μg、女性では350μgです。

 

セレンは必要量を適切に摂取することが重要ですが、実は過剰摂取にも注意が必要です。

セレンは不足だけでなく過剰にも注意が必要

セレンには毒性もあり、耐容上限量を超えて過剰に摂取すると中毒症状が発生する恐れがあります。症状には、脱毛、爪の変色、胃腸障害、神経系の障害などが含まれます。

 

また、セレンの過剰摂取は甲状腺機能を低下させる恐れもあります。

 

食品のなかでは、ブラジルナッツには非常に多くのセレンが含まれており、数粒で過剰摂取になってしまいます。サプリメントやブラジルナッツ摂取によるセレン過剰症の報告例もあります。

食生活での注意事項

セレンが豊富な食品(魚介類、肉類、卵、全粒粉など)をバランスの良い食生活のなかに取り入れることで、自然な形でセレンを補うことができます。

 

あえてセレンが高濃度に含まれるサプリメントや食品を取り入れなくても、セレンの推奨量を満たすことができます。

セレン不足になりやすい食生活

一般的には栄養バランスの良い食生活において、セレンが不足することはありませんが、いくつかの条件によっては、不足することもあります。

  • 海のない内陸部の国で生活をしている方
  • 加工食品に頼った食生活

栄養バランスの崩れた食生活では不足することもあります。

その他、いくつかの疾患の影響で吸収障害が起こることもあります。

橋本病にはセレン補充が必要?

セレン不足は橋本病に影響を与える恐れがあるとされていますが、サプリメントなどでセレンを積極的に補充した方が良いのでしょうか?

 

 

さまざまな研究報告によると、橋本病に対するセレン補充は症状の緩和や抗体レベルの低下が期待されるものの、セレン補充による効果は得られていません。

 

橋本病の原因はさまざまで複雑です。サプリメントなどの摂取は慎重に行う必要があります。

まとめ

栄養バランスの良い食生活を送ることで、多くの場合はセレン不足を防ぐことができます。内陸の国での生活や個々の健康状態によっては不足する可能性もあります。

 

適切な量のセレンは甲状腺ホルモンの働きをサポートします。しかし、セレンの過不足は甲状腺機能を低下させる恐れがあります。

 

多様な食品をバランスよく食べることが、セレンを過不足なく取り入れる一番の方法です。必要に応じて医師や管理栄養士に相談し、個別のケースに対応しながら、セレンの過不足を防ぎましょう。

参考文献

厚生労働省,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf