バセドウ病は甲状腺ホルモンの過剰分泌が原因で発症する病気で、治療により完解に至ることもあります。しかし、完解後も引き続き注意が必要な点があります。その一つが、ヨウ素の過剰摂取です。近年の研究では、完解中のバセドウ病患者がヨウ素を過剰に摂取すると、再発のリスクが高まる可能性があることが示唆されています。今回は、なぜヨウ素の過剰摂取がバセドウ病患者にとって問題となるのか、そしてその予防方法について解説します。
ヨウ素が甲状腺に与える影響
ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素であり、通常は食事から摂取します。甲状腺は、ヨウ素を利用して甲状腺ホルモンを生成します。しかし、過剰にヨウ素を摂取すると、甲状腺の機能に悪影響を与える可能性があります。特に、バセドウ病のような甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態では、ヨウ素の摂取が再発を引き起こすトリガーとなることがあります。
研究結果と再発のリスク
複数の研究により、バセドウ病が完解した後でも、ヨウ素の過剰摂取が再発のリスクを高める可能性が指摘されています。
特に海藻類やヨウ素を豊富に含むサプリメントなど、意識せずにヨウ素を大量に摂取してしまうことが問題となります。過剰なヨウ素が甲状腺に刺激を与え、ホルモン分泌の異常を引き起こすことがあるのです。
ヨウ素の過剰摂取に注意すべき食材
バセドウ病を完治後も継続的に管理するためには、ヨウ素を含む食品に注意することが重要です。以下はヨウ素が含まれる代表的な食品です。
- 海藻類（わかめ、昆布、ひじきなど）
- 魚介類（特に海水魚）
- ヨウ素添加のサプリメント
- 卵（ヨウ素が強化されていることがあります）
これらの食品は健康に良いとされることが多いですが、過剰に摂取すると甲状腺の状態に悪影響を与える可能性があります。この中でもっとも注意が必要なのが海藻類です。特に、昆布にはヨウ素がとびぬけて豊富に含まれているため、ほんの少量でヨウ素を過剰に摂取してしまいます。その他の食品も、ヨウ素が強化されているものは注意が必要です。
予防と適切な摂取量
ヨウ素の過剰摂取を避けるためには、適切な摂取量を守ることが重要です。 日本人の食事摂取基準 2025 年版の成人男女におけるヨウ素の推奨量は 140μg です。過剰摂取しないためには、海藻類を1度にたくさん食べたり、毎日食べることは避けましょう。
バセドウ病の完解後でも、再発のリスクを抑えるために、食事や生活習慣に注意を払うことが不可欠です。
まとめ
完解中のバセドウ病患者にとって、ヨウ素の過剰摂取は再発のリスクを高める可能性があります。ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に関与する重要な栄養素ですが、過剰に摂取すると甲状腺の機能に影響を与えることがあります。完解後もヨウ素を多く含む食品に注意し、適切な食生活を送ることが大切です。
参考文献
厚生労働省,「食事摂取基準（2025年版）」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
Xie Q, Zhang X, Ma J, Lu X, Zhang Y, Tong N. Effect of iodine nutritional status on the recurrence of hyperthyroidism and antithyroid drug efficacy in adult patients with Graves' disease: a systemic review. Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Oct 11;14:1234918. doi: 10.3389/fendo.2023.1234918.
