
近年、有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)が健康への悪影響を及ぼす可能性があるとして、日本でも関心が高まっています。特に、PFASの中でもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、環境中に蓄積しやすく、甲状腺機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。この記事では、PFASとは何か、甲状腺ホルモンへの影響、そして対策について詳しく解説します。
PFASとは?
PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は、炭素とフッ素が強固に結合した人工化学物質の総称です。防水性や耐熱性に優れることから、さまざまな工業製品や日用品に使用されてきました。その中でも、PFOSやPFOAは特に環境や健康への影響が懸念されており、多くの国で使用が規制されています。内分泌かく乱物質とも呼ばれることがあります※。
PFASは何に使われている?

PFASは、以下のような製品に使用されています。
- フライパンや調理器具のフッ素加工(ノンスティック加工)
- 防水・防汚加工された衣類や家具
- 消火剤(特に泡消火剤)
- 食品包装(ファーストフードの包装紙など)
- シャンプーや化粧品
- 一部の水道水
PFASの人体への影響
PFASは分解されにくく、環境中に長期間残留し、飲料水や食品を通じて体内に蓄積する可能性があります。疫学研究では、長期的なPFASへの暴露が以下の健康リスクと関連していることが報告されています。
- 甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)
- 発がんリスクの増加(腎臓がん、精巣がんなど)
- 免疫機能の低下
- 腎機能障害
- 出生体重の低下や胎児発育への影響
甲状腺ホルモンとPFASの関係
甲状腺ホルモンは、代謝の調整、成長、胎児の発育に重要な役割を果たします。PFASは甲状腺ホルモンの合成や代謝に影響を与え、ホルモンバランスを乱す可能性があります。特に、妊娠中の女性や成長期の子供では、甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで発達に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)との関連性
自己免疫性甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病)は、甲状腺機能の異常を引き起こす疾患です。現在の研究では、PFASが直接的に自己免疫性甲状腺疾患を引き起こすと断定するには不十分ですが、環境因子が疾患の発症や悪化に関与する可能性が指摘されています。そのため、自己免疫性甲状腺疾患を持つ方は、環境因子の影響に注意を払うことが推奨されます。
PFASの影響を避けるための対策

PFASによる健康リスクを軽減するためには、できるだけ暴露を避けることが重要です。以下の対策が有効と考えられます。
調理器具の見直し
- 傷んだフッ素加工のフライパンは使用を避ける
- セラミック加工やステンレス製の調理器具を選択する
- 高温加熱や空焚きを避ける
飲料水の管理
- 井戸水を使用している場合は定期的に水質検査を行う
- 水道局のPFAS関連情報に注意する
- 活性炭フィルターを使用(ただし、こまめな定期的なフィルター交換が必要)
- 逆浸透膜(RO)フィルターで長期的に除去
日用品の選択
- 「PFASフリー」の食品包装や化粧品を選ぶ
- 防水・防汚加工された衣類や家具の使用を減らす
食品からの暴露を避ける
ファーストフードの包装紙や使い捨ての食品容器をできるだけ避ける
まとめ
PFASは環境中に残留しやすく、人体に蓄積し、甲状腺機能障害などの健康リスクを高める可能性があります。特に、自己免疫性甲状腺疾患を持つ方や妊娠中の女性、子供は、PFASへの暴露を最小限に抑えることが重要です。
日常生活の中でPFASを含む製品を避け、飲料水や食品の選択に気をつけることで、リスクを軽減できます。健康を守るために、できるだけPFASの影響を減らす生活習慣を意識しましょう。